日本美術刀剣保存協会和歌山県支部

楽久我喜帖

日本美術刀剣保存協会|和歌山|紀州|

楽久我喜帖

楽久我喜帖

思い出の古銃

< 宮本 博 >

ウインチェスター社製アンダーレバー式ライフル銃二十五口径千八百九十五年製造。
私が初めて自分のものにした銃(許可銃)です。
此の銃の作られた年の日本は明治二十八年で日清戦争終結の年です。
この年代物の銃が生産されてから六十七年目、私が二十歳過ぎて間もなくに縁があって我が家に来ました。
その当時、私はこの銃を狩りに使用する目的でなく、銃そのものに魅力を感じ実包も年代が古い為に入手が難しいのを承知の上での購入でした。
それなりに時代を経てますので、木部の痛みや金属部に使い痛みの傷もありましたが、照準器は遠距離射撃に適応した古風な味のある形状をしており、いかにも時代を感じさせる銃でした。
昭和四十年代の鉄砲ブームで狩猟やスポーツ射撃が盛んになり、私もライフル射撃協会や猟友会に入会して、競技射撃やハンティングの魅力に取り憑かれ、雉打ちに始まり大物猟の鹿・猪猟まで行き着きました。
元来の凝り性なので当然の如く、高性能のライフル銃が欲しくなり新型銃を買い求める決心をしたの迄は良かったのですが、ここで一つの問題が発生しました。
当時、日本国(和歌山県)における鉄砲の許可制度は非常に厳格な審査が求められている時代でした。
果たして、明治中期に製造された珍しい銃を手放してでも高性能の銃にするか否か、迷いに迷った挙句に猟欲に負けてしまい、結局は古い貴重な銃を手放すことを条件に買い換えてしまった訳です。
なお、「手放した・・・」と云えば格好良く聞こえますが、警察へ任意提出致しますと、悲しいかなスクラップ同然の扱いになります。
いま流行の言葉で申し上げますと製鉄所へリサイクルに回されてしまうのです。
その時に外した照準器だけが手元に残っています。
百年以上の年月を経ていても、機能を持っている銃は殺傷力を有していますから、危害防止の為に定めている銃刀法の趣旨に照らし合わせても、現在の法の下では許可銃を登録銃に変更を望むなどというのは”夢のまた夢”であり、無理な話かも知れませんが愛銃家の一人としては若干なりとも現行の銃刀法の規制緩和に期待しています。
今でも、許可銃で時代は明治のヨーロッパで有名な銃器メーカーの高級銃や、名工によって作られた素晴らしい彫刻の施された銃を大切に保存目的で維持されている奇特な愛銃家も見受けられます。
しかし、日本国内では原則的に銃砲刀剣の所持が禁止されている状況下で、銃を持つ為には所持しようとする銃が現在の銃、即ち許可銃では所持しようとしている人の住所地を管轄する公安委員会に申請して所持の許可を受けなければなりませんし、この場合は所持が個人に対する対人許可ですので法的に資格のある人以外は触れさす事すら出来ません。
勿論、第三者に預けたり、貸したり、譲渡したり等の勝手な行為は全て違法となり厳しく罰せられることになります。
また、所持しようとする銃が登録銃ですと、銃そのものが対象となりますから、対物許可になり、登録証が付いていれば自由に譲渡したり出来ます。
また、歴史的遺品である古式銃の保存のされ方でありますが、現在たいへん危険的と云ってもよい状況下にあります。
古式銃は、美術品であっても現代銃共々包括して「銃」と呼ばれ、こうした社会の中での認識のされ方に問題があるのではないでしょうか。
さて、銃と刀は見た目には全く異なる美術品ですが、意外と共通点もあります。
どちらも武器として生まれていますが、銃はクレー射撃やライフル射撃の競技銃として、刀は居合道用として、何れのスポーツにも不可欠なものとなっています。
そうしたことから、私は銃と平行して古くから刀剣の趣味もあり、「川井久幸(天保年号入り)」刀の他、幾振りかの刀剣類を所蔵、暇を見つけては鑑賞を楽しんでいます。

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